重慶大厦 Chungking Mansion

夜特急に憧れて、重慶大厦に泊まったのが二十歳の頃。インド、バングラデシュに行くためにストップオーバーで香港に降り立った。あまり時間がなく廟街も行かず葡京酒店で大小もやらずに、とにかくその怪しい連れ込み宿に泊まることを最優先に香港に降りた気がする。そのせいで私の香港のイメージは、重慶大厦とペニンシュラホテルとスターフェリーだけだった。いつか行かねばと思いつつ、ついぞ10年も経ってしまった。
現在の重慶大厦は外見こそ綺麗に明るくなっていたが、一歩踏み入れればインド人がたむろしており怪しい日本語で話しかけてくる雰囲気はそのままだった。そして30年以上も前に沢木耕太郎が魅了されたあの香港の空気の片鱗が今なお残っている気がした。ただ、そんな自分は今はザックは背負ってないし、三十歳のおっさんになろうとしているし、ひとりではない。初めて香港にひとりで降り立った二十歳ときの不安と期待が入り交じった好奇心を生で感じることはなく、既に思い出になっていた。歳をとりすぎてしまったんだなと。

雑居ビルの中の迷路のような商店密集地を通り抜けると、突き当りにエレベーターがあった。年代物らしく、降りてくるスピードが恐ろしくのろい。ようやく一階に到着し、扉の開いたエレベーターからは、強烈な香辛料の匂いが溢れ出てきた。中国人に混じって何人ものインド人が乗っていたのだ。全員が降り、私が男の後から乗り込むと、また別のインド人が走り込んできた。この雑居ビルにはインド人がかなりいるようだ。

沢木耕太郎 著 深夜特急1 − 香港・マカオ編 −

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dada